目標とする大学の学部・学科に受かるものなのだろうか。これが合格発表の時までずっと疑問に思い続けてきたことだ。
私にとって獣医学科は雲の上の存在だった。獣医師になるには獣医学科に合格し、6年間学び、国家試験を突破しなければならない。つまり獣医学科に合格する必要があった。小学生の頃からなりたいと思い、当然のように高校では獣医学科を目指した。
受験が何か分からないまま進んだ道。難しいだなんて知らなかった。模試の判定は毎回E。合格の可能性は20%以下。自分に絶望し、道ですれ違う人、電車の同じ車両に乗った人、テレビに映った芸能人、老若男女を問わずすべての人に劣等感を感じたこともあった。
高校3年生の秋にやっとでたB判定に涙が出るほど喜んだ。今までは分からなかった可能性がでてきたのだ。それでも力は足りず、すべて不合格。編入を狙う誘いもあったが断り、一浪を決意した。そこで理想と現実の違いを見せつけられた。浪人生活は決して甘いものではなかった。浪人したらたくさん勉強できて、とても頭が良くなって現役の自分よりも輝けると信じていた。実際は一日でやれる勉強の範囲が限られており、脳みそが劇的に変化するわけでもなかった。昨日と今日の自分の違いを見つけられないまま一日、一日と時間が過ぎていく。時間に余裕があるとは思えなかった。また、自分の甘さを痛感した。家で勉強しようとしてもやらないのだ。
合格しなくちゃいけない理由はたくさんあった。誰しも負けられない理由はあるだろう。理由なんてものは背負おうと思ったらいくらでも背負えた。それでもやろう、やらなきゃと思うだけで行動に移さない自分がいた。「自分を信じろ」とよく世間で言われているけどそんな自分を信じることはできなかった。だから自分を勉強する環境におくことにした。木村先生に頼み、シナプスの自習室を利用させてもらった。なまけさせないために通いまくった。シナプスがなければ弱い自分に悩み続け、勉強もせず不合格だったかもしれない。本当に感謝している。
シナプスだけでなく、私に関わった人々の想像以上に多くの支えがあり、なんとか乗り切った。もう二度としたくない受験をしてよかったと思えるのは親の偉大さを知ることができたからだろう。親には金銭的、精神的にも助けてもらい迷惑もかけた。なかなか喜べるような結果を出さない私を心配し、半分あきらめつつも最後まで応援してくれた。私にとってこれ以上ないというくらいの殺し文句を言ってくれた。いてもいなくてもどうでもいいと思っていた父を好きになることができた。センター試験を「勝負だ」と言って一緒に受験してくれた父は今では自慢だ。何か恩返しをしたいと思い考えたが、合格が一番の親孝行だった。それしか私にできることがなかったから。合格の報告に泣いて喜んでくれた母。どうにか孝行が果たせて本当に良かった。
ここに至るまでいろいろあった。私の歩んできた道は周り道だったのかもしれないし、近道だったのかもしれない。その道で出会ったすべての人に感謝の気持ちを述べたい。そしてどんくさい私をここまでこさせてくれた自分自身にも。
アリが10匹じゃない「ありがとう」をありがとう。踏むことのできた未来への第一歩を大切にし、大学生活を励んでいきます。